AIの課題は、テクノロジーではない。
リーダーシップである。
2026年7月
多くの大企業はすでに、AIが有効であることを実証しています。生産性を向上させるパイロット、
業務を自動化するAIエージェント、そして実際のビジネス価値を示すプロトタイプ。
さまざまな成果が生まれています。
しかし、その一方で、多くの企業が個別の成功事例から先へ進めずにいます。
問題は、テクノロジーではありません。リーダーシップです。
AIへの取り組みで最も難しい局面は、プロトタイプが成功したその後に始まります。
新たなAIの力を実際のビジネスに組み込み、業務プロセスを変え、責任の所在を明確にし、
本格展開に向けた投資を行う。そして、時には仕事の進め方そのものを見直さなければなりません。
この段階になると、AIはERP刷新、M&A、サイバーセキュリティ、コスト削減など、すでに
経営課題となっている数多くのテーマと、経営資源や優先順位をめぐって競い合うことになります。
そこで必要になるのが、経営トップの明確なコミットメントです。
経営幹部が自ら旗を掲げなければ、AIへの取り組みはしばしば勢いを失います。
それは、AIの技術が失敗したからではありません。
組織が、それまでの優先順位へと戻ってしまうからです。
私は、この段階を企業がこれまでとは違う形で捉える必要があると考えています。
新たなAIの可能性を全社へ広げていくために必要なのは、単なる予算措置ではありません。
組織の壁を取り除き、部門を越えて優先順位をそろえ、AIが日常の業務として定着するまでその
取り組みを守り抜く。その責任を担う経営リーダーが必要です。
なぜなら、エンタープライズAIは、従来のガバナンスの枠組みにはきれいに収まらないからです。
AIは、事業部門、テクノロジー、データ、法務、財務、人事、リスク管理など、組織の
さまざまな領域を横断します。
こうした組織の境界を越えて意思決定できる権限を持つ人がいなければ、変革のスピードは落ち、
やがて組織の熱意も失われていきます。
私はこれまで、パイロットプロジェクトを成功しながら、結局、本番導入まで
たどり着けなかった企業をたくさん見てきました。
一方で、経営トップがAIの全社展開を「テクノロジーのプロジェクト」ではなく
「経営の優先課題」と位置づけたことで、持続的な競争優位を生み出した企業も見てきました。
取締役会にとって、これはAIについての議論そのものを変えることを意味します。
問うべきは、もはや、
「AIのパイロットをいくつ実施しているか?」
ではありません。より重要なのは、
「有望なAIを、プロトタイプから全社で活用できる力へと進化させる責任を、
誰が担っているのか?」という問いです。
テクノロジーは、機会を生み出します。
その機会を企業価値へと変えられるかどうかは、リーダーシップが決めるのです。
取締役会への問い
あなたの会社では、AIプロトタイプを全社で活用できる力へと進化させる責任を、誰が担っていますか?